2011年02月 - かわいくて斬れない
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江戸のダース・ベイダー

そういえば作品自体の感想は書いても殿オンリーの感想は書いてなかったな!という事でひたすら殿だけを追いかけた感想を書いておきたいと思います。もう本当ただ追いかけてるだけだし不真面目なのでよろしくお願いします。ああいつもか…

まあでも本当、リメイクの何が一番最高かってやっぱり殿ですよ。
旧作では憎たらしいバカ殿様だっただけに、よくここまで違うキャラにしたなというアイディアへの驚きと、そして何よりそれを演じる稲垣吾郎の演技。
まず第一声の「お前は誰だ」からゾワッとします。
旧作と同じ台詞だけあってその異質ぶりが際立ってました。声だけで何かヤバい(失礼)
で、バカ殿は腕を掴んで引きずり込んでたのにこっちの殿はいきなり髪の毛引っ掴んで引きずりますからね。更に足蹴にして転がす。その時露になった足袋を穿いた足と細いふくらはぎに浮かぶ筋肉にドキッ☆
その後訪れた采女に、髭を抜きながら退屈そうに寝転んでいた体勢から気だるげにゆっくりと起き上がって首を傾げ気味に見上げてくる顔とかさ!「木曽の女は山猿よのう。引っ掻くばかりで面白うない」と怯える千世から舐めるように采女に視線を移すさまとかさ!エロいよね!
そしてこっちでは旧作と違って殿に向かって行かず呆然と千世に近寄っただけの采女を突然刀抜いて背後からグサッだよ!酷いなんてもんじゃないよ!
そのせいで綺麗なお顔に返り血を浴びるんだけど、その返り血でぬらぬら光った唇がさ、エロいよね!で、イッちゃった表情で何度も刀を振り下ろす時、額に血管が浮かんでんだよ!凄まじい演技!エロい!(何回言うんだよ)
しかしこんだけモロなシーンやっといて、試写会で「映画見たら物凄く酷い事してて僕もビックリしました」とか何を白々しい…と思いました。(笑)あっでもみなごろしは実際観なきゃ知らないか。
そしてこのシーンの、返り血浴びて血まみれの刀持って采女を見下ろす、足を広げ気味なせいで太ももの結構奥の方まで露出した殿の写真がやたらと宣伝写真に使われているのは何故?ああいう写真って誰がセレクトしているの?確かにベストショットだけど!怖いし美しいけど!どこにでもあの写真が使われててエロ過ぎていたたまれません!ありがとうございます!(深々と礼)

声無しですけどファーストカットも衝撃でしたね。名前が筆書きの字幕でカッコ良く出てる横で袴に尿瓶的な筒を突っ込まれて用を足してるんですよ。
しかも撮影のファーストカットも実際このシーンだったそうですが、現場に入って初めてどういうシーンなのか説明を受けたとか。「そうなんですか!知らなかった…すごいファーストカットだ」と驚き、撮影が終わった後「これだけですか?」と戸惑ってたという三池監督が語った初日の吾郎の様子を思うと胸が熱くなります。初日に気合入れて来た稲垣吾郎にいきなり衆人環視の中用を足すシーンだけやらせてその日の撮影終わりですよ。流石三池監督ドSだぜ!

そして回想シーンではなく今現在での殿の様子が出るのは半兵衛帰ってくる中庭でのシーンが初めてですが、旧作のこの時点ではまだバカ殿は間宮家をひっ捕らえてこの下郎どもめムキーって感じで激怒してただけなのにこっちの殿はもう超手ぇ早い、半兵衛着いた時には既に断末魔の悲鳴が響いてますからね。ヒックヒック言ってる幼子に矢を放って外して舌打ちする顔から登場ですよ。暴君にも程があるだろ!
「殿ー!!」と駆け寄る半兵衛に新しい矢を構える手は止めず「半兵衛か」と涼やかに言う殿。「恐れながら!間宮の家族に手はつけるなと土井大炊が申しておりました!」的な事を強い焦燥と共に叫ぶ半兵衛に、はーやれやれ、って感じのおどけてすらいる表情を浮かべながら「土井大炊め、世迷い言を」と全く構わず矢をキリキリ。「殿っ…殿ー!!」と叫ぶ半兵衛の制止も虚しく矢は幼子へ命中。
「武士とは何だ、半兵衛」階段を上がって持っていた弓を半兵衛の肩に有無を言わさず押し付ける殿。呆然と受け取る半兵衛。もうこの弓を預ける仕草、自然すぎる女王様ぶり、吾郎にしか出来ないね!今「弓を半兵衛に押し付ける吾郎」って普通に書きそうになってあぶねってなったもんね!
「皆日頃、忠義忠義と念仏のように唱えておる。だがそれを信じ、家来どもを甘やかせばいつしか主に尽くすという武士の本義を忘れ、間宮のように主を蔑ろにする下郎が出てくる」
蹴鞠を蹴っ飛ばす殿。この蹴り方も脚ピーンと伸ばして思いっきり蹴ってる感じがゴミ蹴ってる感じで良いです。
「主の為に死ぬるは、侍の道。亭主の為に死ぬるは…女の道」
言いながらまた弓を半兵衛から奪い、まだ生きていた間宮の妻に近寄り足蹴に。腹あたりを蹴られて呻く妻。この妻がふくよかな普通のおっかさんって感じで悲愴感二倍です。怯えてるよーやめてあげてよー(泣)
でも容赦無く至近距離から弓矢を。この冷たく見下ろして弓を引くお顔のアップがまたとっても美しいのが憎たらしいです。人形みたい!
矢を打ち終えた後の手を伸ばした姿勢も妙にサマになってます。死体となった間宮の妻を見下ろして、満足げに微笑すら浮かべている横顔。
そしてゆっくりと振り向き、「道筋は…正さねばならぬな。半兵衛」こわいよおおおこの人怖いよおおおお
そりゃあ半兵衛も気圧されて「はっ……」と頷くしかないわ。

でも思えば「侍の為すべきことはただ一つ。主君に仕えることではないのか」と新左衛門に真剣な表情で問うていた半兵衛は、この殿の論理に畏怖しながらも賛同していたんでしょうね。浅川並びに家臣達も、やれやれ仕事だからって感じで殿に付いていた旧作と比べて心から従ってる感じでした。
武士道の世界というのは奥深すぎて、ちゃらんぽらんな現代人である私には深遠過ぎる世界です。
江戸時代の大名の権力というのは本当に絶対的で、忠告すら死諫、つまり死をもってでしか出来ないという有様。間宮図書が冒頭でやってましたね。血管浮き出させながら。
その大名自身の人格とか行いは関係ない、とにかく主君には絶対服従という封建的な制度に、あくまで下の立場である武士が耐えうる為の精神的な指針、ある種の宗教のようなものがよく言う葉隠に記された武士道であったとかいう文章を見かけました。さっき。(付け焼刃の極み)
つまり本来同じ人間の筈なのに従わなくてはならないという不条理を封印し、主君を神のような立場まで上げ自分達を卑下する事によって両者の身分の差を絶対的なものにし、従う事の不自然さを解消・美化して自分達の自尊心を守ろうとしたと。
その主君に対する忠誠は恋愛感情の最も激しいものにも等しく、しかし何より美しいのは「しのぶ恋」なのでベタベタしたりしてはいけない、いざという時に主君の為に死を選ぶ事でそれを示せ。と、そんな感じの世界だとか。うーんディープネス!
旧作はそれが当たり前だからこそそこまで深く武士道とかに縛られていないような、制度は当然に守るけど心はそれに侵されていない、むしろ三池版より自由かもしれないという感じを受けました。
三池版は刺客側は身分的にも精神的にも自由度が増して、逆に明石藩側は精神的にも封建制度に縛られてしまったような、そんなパワーアップもしている印象です。
平山に心底恐怖しながらも、前に出てきちゃった殿を庇って「うわあああ!!」と叫びながら守ろうとしたり、「殿を頼みます!頼みます!」と叫びながら溜め池に倒れていった浅川の姿、「何としても殿を守るのだ!!」に力強く応と叫んで返し、誰も逃げ出そうとしなかった家臣達、そして最後の最後まで殿を守って死んだ半兵衛。
全員殿に心の底から怯えながらも、同じだけ心の底から従い、忠誠を誓ってしまう…
恋愛感情というものが相手に心を囚われる、縛られるものなのだとしたら、確かに主君への忠誠というのは最高の恋愛感情に等しいという理論もあながち間違いではないのかもしれませんね。
でも武士にはそういう考え方が必要でも、主君には要りません。だって好き勝手やっても皆付いてくるんだもん。
ただ旧作の殿は何でも思い通りに出来る立場に図に乗って増長した典型的バカ殿ですが、稲垣殿はむしろそれを是としない、増長どころか冷め切った殿でした。
吾郎さんはこの斉韶をどう解釈していましたか、というパンフレットでの質問に対して「彼は実は江戸の封建社会の犠牲者だと思うんです。型にはめられた人生を送るしかなく、コンプレックスやジレンマなどと戦い、結局、ああいう残虐なふるまいでしか自分を表現できなかった。僕としては可哀想な人間だという意識を持って演じていました」と答えています。
何もしなくても付いてくる家臣ばかりに囲まれて、ずっと斉韶は寂しかったのかもしれません。自分がどういう人間だろうと家臣は付いてくる。ただそれは自分がたまたま主君だから付いてきているだけであって、どんな主君でも付いてくるという事は自分がどういう人間だろうとどうだっていいという事でもある。
そういう生まれてからこの先まで自分の人生にずっと付いて回るジレンマやコンプレックスを、悪逆非道とまで言われた行いによって家臣に恐怖を与え、あくまで立場ではなく自分の行動によって従わせる事で解消しようとしていたのかもしれません。だから自分が周囲に恐怖を与えて来る為、一番用いてきた道具である刀を『飾り』と新左衛門に評されて、人生で初めてだろうと思える程激昂したのでしょうね。
ああなんか四回目の鑑賞にして吾郎さんの言ってる事にようやく自分なりの理解が出来た気がします。おっせえ!(笑)
そんな中で市村さんが答えているように半兵衛は『普通の人』で、真面目で自分の仕事をきちんとしようとする侍。普通の人だから体制に逆らおうとはしないけど、斉韶のしている事は普通じゃないので心は付いていかない。
その普通さ、悩み揺れ動く真面目さを殿は気に入っていたのかもしれませんね。自分の行動への恐怖や問題意識が麻痺してしまった家来はもうつまらない。どれだけ残酷な行いを目の当たりにしてもそれを変わらず残酷だと咎める事の出来る半兵衛だから、殿はいっつも半兵衛半兵衛言ってたんだと思います。

さっきまでの阿鼻叫喚からはうってかわった静寂の中、庭に横たわる間宮一族の死体を前に縁側に座ってぼやく殿。
「しかし、これだけやってお咎めなしとはつまらんのう。一度この首、刎ねられてみたいものよ」
刎ねられる時を想像するように掌で首を摩って、剃り残しの髭を手遊びに抜きながら、甘く気だるい声で呟く。
「徳川の世もそう長くはないな、半兵衛」
「……滅多な事を」
聞き咎める半兵衛に顔を向けて、更に困る一言。
「世が老中になるのだぞ?」
今しがた作られたばかりの死体の山を前にして、何も言えず黙り込んでしまう半兵衛。その顔をしばらくじっと見て、「……フン」と喉を鳴らす殿。
このフン、ってアドリブかな…物凄い自然な鼻で笑い加減でゾクゾクしました。見下してるとかそういうんじゃない、もう絶対的に上の立場なのは揺るぎない上での、少し面白がるような「フン」ですよ!
もうこの時点でカリスマオーラがハンパないです。家来を弄んでる感じがひしひしと!

そして衝撃の犬食いシーンですよ。多分あの覆い被さるような絶妙な仕草の食べ方、三池監督の指示も「むしゃぶりつくような感じで!」みたいな、そういう意図の支持だったと思うんですね。吾郎さんがパンフレットで「監督が出してくるアイディアがすごいんです。犬食いするシーンなんて最高ですよね」と言ってますが、そういうアイディアを出せる監督と、それに答えられる役者の関係って素敵ですよね。吾郎にあんなエロいシーンを撮らせてくれて心の底からありがとう監督!
鯛の端っこくわえてぼとって落ちる所がツボです。猫みたい…
で、ほっぺたに一杯頬張りながら「今宵は女二人といこう(もぐもぐ)」ですよ!こらっ斉韶くんったらはしたないわ!
この呟いた後、ちょっとどっち方向から食べるか逡巡してからのむしゃぶりつき方が特にエロいです。いやあDVDが出たらズームにならないかなホント…本編では蚊帳越しで全然構わないんで、特典映像で蚊帳を越えた版を。売れるぞ~(買うかどうか左右する要因だろうか)
そして作戦考える新左衛門のカットの後に、蚊帳内で稚児に酌をさせてお酒を嗜むお殿様のカット。行灯の光も美しく、何とも言えない雅なシーンです。飲んでるお酒は大関ですか?(そんなバカな)
蚊帳に止まってる蛾をじっと見つめる目が…本当怖いこの人。目合ったら小太刀飛んできそうじゃん。こんだけ怖い悪役って最近中々居ないよ。
しかしさっきの呆然と泣いてた間宮の幼子といい、この人形のように表情が動かないお稚児さんといい演技派ですな。

この後の山で大量の蛭にくっ付かれてギャーッてシーンで、あらまあクスクスって感じで場内にお上品で控えめな笑いがさざめいていたんですが、画面が切り替わって籠の中の斉韶の虚ろな表情のアップになった途端その笑いがサッと水を打ったように静まり返りました。
この真っ黒な瞳が印象的な、あどけなく見えてそれでいて壊れているような虚無感のある表情は見事ですね。楽しそうな若者達のシーンの直後にこの孤独を極めたようなカット。凄いインパクトです。
しかもこの殿の顔に画面が切り替わると同時に、雑音が一切消えて「シャンッ」て凛とした鈴の音が響くんですよね。トライアングルでも最終回、舜の微笑みと共にエンディングテーマが流れ出して物凄い余韻のある演出だったんですが、吾郎の演技は特別なBGM付けたくなる演技なんでしょうか(?)

そして吾郎さんが撮影前スーッと刀持ってきて「斬っちゃおうかな~」と冗談をかまして「いやいや、斬ったらハナシそこで終わっちゃうじゃないですか」「そうですよね」なんて会話をしたという、三池監督から心暖まるほのぼの暴君エピソードが明かされた橋でのシーン。
尾張藩での事件を話すシーン以外で唯一の松本さんの出番で、夏の暑い盛りの屋外でのシーンです。エキストラも居るし、スタッフも気を遣って、現場にはピリピリした緊張感が漂っていたんでしょう。
そんな三池監督スタッフ、そして大御所俳優を前に「斬っちゃおうかな」なんて言える吾郎の神経の図太さったらないですね!(笑)他にも初顔合わせの時、鬘を被せて「こういう感じです」と説明したら「やっぱり、ちょんまげなんだあ」とへえ~、って口調で呟いて三池監督に衝撃を与えたというエピソードも言ってましたね。「大物だなぁこの人…殿だなこいつは」と感心したというw
多分、吾郎さんは周りの空気が移って緊張したりとかするタイプじゃないと思うんですよ。自分が緊張する状況なら緊張するし、緊張しない状況なら緊張しない。つまり物凄いマイペースというか。
前『Mの悲劇』のインタビューで、共演の長谷川京子さんが「スタッフ皆がすごく忙しくバタバタ動き回って、ピリピリしてたのに、その真ん中を優~雅に歩きながら「ヤーッホーッたーったらんらんらん」と歌っていた」という撮影中の吾郎さんの様子を明かしてくれました。吾郎さん曰く「場の空気を和まそうと思ってね」という事らしいですが、思っても中々実行出来る事じゃないですよwww
松本さんの時も緊張感溢れてたと思いますが、鬘の時も初顔合わせって事で緊張感漂ってたと思うんですよ。だからつい和ましちゃおう!みたいな気分になったんですかね。お茶目な人です。

「何事だ」と出てきて、立て札を読む殿。
何かこの差し止められるシーンの殿のお顔がすっごい可愛く見えました。明るい所でのアップだからかな…旧作の殿の顔がアップになるシーンってこの辺の印象が強いので、それでかもしれません。旧作の殿が成人男子って感じだったのに比べて、やっぱり童顔というか…キュートな顔してるなと。映画は長めのスパンでの撮影なのでやっぱりシーンごとに微妙に顔つきが違ったりしてますが、このシーンは特に可愛い顔してました。エキストラの人が「美少年だった」とか言っちゃう気持ちも分かります。
「おのれら、斯様なものを、手を束ねて見ている所存か」
私は初見の時『束ねて』をこの場合「つかねて」と読むのだという事を知らなかったので普通に観てましたが、知ってる方から見るとアチャーだったでしょうね。
吾郎さんは読書家で驚くほど色んな本を読んでますがたまーに読み仮名間違ってる時があります。
私も読めない漢字が出てきた時に、自分で勝手に読み仮名ふって読んじゃってそれを本来の読み仮名だと誤信して覚えて後々恥をかくという事が結構あるんですが、吾郎さんもそのパターンかな。
まあDVDでもこのままでしょうね。いいと思います、かわいいし(そればっかりだな)
「尾張中納言が御三家の一なら、この斉韶は将軍の子、将軍の弟ぞ。尾張六十一万石など恐るるに足らぬ。渡るぞ」
こっちの殿は怒ったりしません。無表情のまま問答無用で立て札を切り落とし、何を馬鹿な事を、と鼻で笑いながら刀を抜き身で持ってずんずん歩いていきます。
しかしお殿様言葉が似合いますね。違和感がない。高貴な役の似合う男・稲垣吾郎。
そんな殿の行動に「待て。見ておれ。なろうことなら通り抜ける尾張領に違いない。それが殿にできるか。これまで殿は無理を横車で押し通してきた御方だ。見届けても遅くはない」と部下を止める半兵衛。
でも旧作の冷静でビジネスライクな半兵衛ならこの台詞と行動に違和感無かったけど、市村半兵衛だと例え有用な手だとしても殿を危険に曝すのはためらいそう。きっとこの時内心死ぬほどハラハラしていたに違いないよ。
歩いてくる斉韶を陽炎揺らめく中無言で見つめる恨めしげな幸四郎様のお顔がいい味出してます。
「何奴だ」答えない牧野。「名を言え」この尋ねる時の首を傾げ気味にちょっと微笑んでる感じの顔が非常にかわゆい。小生意気な感じで愛くるしいです。ほっぺツンツンしたい(狂った願望)
「のけ。のかぬと斬って捨てるぞ」
のけ!の言い方が子供みたいでかーわーいーいー
采女の父です、と名乗る幸四郎様へ、その時の感触を思い出すように手にした刀を見下ろす殿。
そしてフフッと笑いながら「親猿の骨は硬いかな?」ですよ!ヒャアアア頭おかしいよこの人!(褒めてます)
意気揚々と歩き出したけど凄い揃った動きで鉄砲隊からロックオン。
それを一度止まって眺めますが、構わず歩いていこうとします。旧作だと普通にビビッて固まってオロオロ後退りしてたんですが、この辺も稲垣殿のクレイジーさの象徴ですね。
そこを物凄い勢いで走ってきた半兵衛が「殿ーっ!!」と両腕をバッと広げて殿の前で立ち塞がります。なんて涙ぐましい…旧作だと後ろから腕を引いて下がってなさい、って感じだったのに。盾となってもお守りする気満々です。
この撮影の時、市村さんが「よーいスタート」で走り出したら直後に袴を踏んづけて前に倒れてしまい、心配してスタッフの人が駆けつける中、この事で映画出られなくなっちゃいけないなと膝がぐじゃぐじゃで痛かったんだけど我慢して撮影を乗り切ったというエピソードを舞台挨拶で話していました。
きっと殿のピンチに焦って駆け付けようとして転んでしまったんだろうと思うと感動もひとしおです。アンタ従者の鑑だよ!
「半兵衛か」とお気に入りの従者の登場に気が逸れる殿様。
「ひとまずここは」と身を挺して庇われながら説得され、少し虚ろな目で黙った後やーめた、とばかりにカランと刀を落として颯爽と踵を返し去っていきます。

そしてこれからどーするよ、と明石藩首脳会議のシーン。
笑わせたい奴には笑わせておけ。一年我慢すれば老中就任なのにここで命を落としたらたまったもんじゃない、と言う半兵衛に浅川がちょっと半笑いって感じで「鬼頭殿は随分と島田新左衛門を買っておられるようだが、あれから何の音沙汰もない。きっと恐れをなして逃げたのでしょう」的な事を言います。旧作だと半笑いだったのは殿で、部下は普通に戸惑うだけって感じでした。こっちの浅川は殿を恐れながらも、殿に仕えている事に誇りというか心酔してる感じがしますね。
それに対し「あの立て札もその島田新左衛門の差し金だという事が分からんのか!」と一喝する半兵衛。こっちも熱いです。リメイクでは皆熱い男になってます。
そんな中温度が大幅に下がった男が一人。
従者を引き連れて悠然と場に現れ、用意された椅子に座る様が高貴過ぎて思わず息を呑みます。お殿様オーラ半端ない。
「侍とは、主君の物笑いを避ける為に死を選ぶと聞いたが」
「はっ……」
旧作では嘲ったように半笑いで言って、「お前はもうちょっと優秀だと思っていたぞ」とかぬかすんですが、稲垣殿はいっそ優しくすらある言い方です。稲垣殿は半兵衛の真面目で堅実、常識的な所を気に入ってる訳ですからね。それを自分が屈服させるのが楽しい。
だから刺客達が「強情気ままな斉韶様のこった、ここは意地を張って苗木藩を通らず迂回して落合宿に来る」って事を理由にして作戦を立てた部分は旧作と一緒なんですが、稲垣殿は意地っ張りが理由というよりも罠が目当てで来るようなイカレ野郎なのでちょっと違和感がありましたね。意地を張っていたのはどっちかというと浅川の方で。

そしていきなりチョイチョイ、と長い指をピンと伸ばして半兵衛を手招きします。よくある「ちこうよれ」って奴ですね!
この部分も超怖かったです。えっ何されんの何されんの?みたいな。半兵衛もビビッてたよ!
殿の傍まで寄って膝をつく半兵衛に、すっと顔を近付けて耳元に一言。
「迷わず愚かな道を選べ」
目を見開く半兵衛。しみじみ思いますがこの稲垣吾郎本来の甘~い声がいい具合に狂気を演出してますよね。すっごい優しい甘い声でイッちゃった台詞言うんだよ?そりゃ怖いよ。
虚ろな目を細めて、「その方が楽しい」。
この発言へのリアクションはシーンとして無かった訳ですが、次に画面が切り替わるともう颯爽と白馬に乗ってる殿が居ますからね。
ああ折れたんだ…と半兵衛への同情でいっぱいになります。
向かい側で微動だにせず見守っている牧野を余裕の表情で見つめて、「行くぞ半兵衛」と馬を走らせる斉韶。
すっごい綺麗に乗ってますよね。気になって乗馬エピソードを調べたんですが、初めて乗馬したのが10代の頃の大河ドラマ『炎立つ』だという事は知ってたんですが一週間しか練習してなかったんだというのは初めて知りました。
何も分からない十代、マネージャーとか居なくて一人で現場に通って、現場に行ったら馬に乗せられて、撮影の一週間前から現場で雪の中を練習したけど怖いしナメられるし。
主君で大将である渡辺謙さんの従者の役なので、それに付いていく為に早駆けとかもやらされたと。怖くてたずなを引いてしまいそうになるんだけど、渡辺さんが「吾郎!死ぬ気で来い!」って言うし、実際映らないようなシーンでも吾郎ついてこい!って言うから必死で。「でもマジで来ましたよ、死ぬ気で」とビストロゲストで感心したように言ってくれた渡辺さん。馬術に優れて吾郎に馬の乗り方も教えてくれたりして、落馬した時は真っ先に駆け付けてくれたというエピソードにキュンとしました。
いや何故か今朝夢に渡辺さんと吾郎が出てきたんですよ。なのでつい気になって調べて感動しました(知らねーよ)
「雪の中で練習しました。何にも解らなくて、お尻痛いし」と回想するまだ十代の吾郎の大変さとか心細さとかを思うと頑張ってたんだなあ、と思いますが、その苦労がこうして今役に立って助演男優賞とか獲る作品に実ってる訳ですから、人生やっぱり積み重ねですよねー。

そして霧を越えて落合宿に到着する明石藩ご一行!
「あと~まで如何ほどか」(名前忘れた)と浅川に尋ねる殿。旧作はこの時点でイライラ気味でしたね。でも疲れてはいるけどイライラはしない殿が素敵です。
「はっ……」「あとどの位かと聞いておる」「え、ええと…」
わざわざ言い直してくれる殿。旧作はもうここでキーッ!!でしたよ。要領を得ない浅川にも寛大。基本怒らないんですよね、殺したりはするけど(矛盾)
そして異変に気付く半兵衛に「どうした、半兵衛」やはり半兵衛の名は呼びたい殿。「しまった!引き返せ!」と方向転換し、殿もわけが分からぬまま馬を走らせますが、数名の家臣を巻き添えにして橋は爆発。
それを見て「面白い…半兵衛突っ込むぞ!」と初めて見せるような楽しげな笑顔を。頬が緩んでる…もういちいち浮かべる表情がこれ以上ないって表情なのが吾郎さんの凄い所です。
矢の雨が始まって、落馬させられる殿。ここ普通にわー殿が落とされたーと思って見てましたが、改めて考えると結構危ないですよね?受身とか取れなそうな、真横に落ちる感じの落ち方ですし。実際CG処理で、矢が飛んできたっていうテイで落ちてくれって指示だったと思うんですが頑張ったなと今思いました。(遅っ)
更に地べたに落ちて這い蹲った所を目の前に矢がビーンと突っ立って、それを目をかっぴらいて見る殿の顔がツボです。何とも言えない味があります。
そして容赦なく狙ってくる矢に避けて、仰向けに押し倒されたような殿のショット!ナイス!ナイスショットです監督!(観てる時は真面目に見てました)
それを一生懸命引っ張って抱えるように非難させ、自分の後ろに庇う半兵衛にキュンキュンします。飛んでくる矢を刀で弾くし。
「馬を捨て、殿を守れ!」
浅川も危なっかしい殿を庇う為、家屋を調べて空いていたので「殿!ひとまずここに!」と叫んで、その声に従い素直に行こうとする殿。それを半兵衛が透かさず止めて「中を改めよ!」「えっ?」「中を改めよ!」慌てておい、中を改めろ、と部下に命じて中を調べると、皆さんご存知大爆発です。この建物だけ実際に爆破して壊して、キャストも皆その瞬間を見学していたばかりか三池監督のご両親も見に来てちょっとしたイベントだった、というパンフレットのエピソードにほのぼのしました。
この後の目を見開いた鬼頭と爆発で煤を被った浅川の何とも言えない「お前殿を入れてたらどうなってたと思うんだ」「あわわわわ」って感じのアイコンタクトが好きです。
「小細工はこれまでだ!」と全員矢を捨て、出てきた斉韶に向けて新左衛門がカッコよく広げるあの「みなごろし」の紙。
それを読んだ後のあの斉韶の顔!ゾクッとしますね。絶妙に無邪気と邪悪さが合わさった微笑みで、あの紙を見てこの表情ってのが恐ろしすぎてもうね。
「敵は大した数ではないぞうろたえるな!」半兵衛の一喝!
「明石侍の意地を見せるのだ!」に、「応!」と返す明石藩のみなさん。
この答える声が超本気で、稲垣殿は物凄い勢いで守られているなあ…と初見からそのやる気に感心していました。
この大軍勢の誰しもが殿を守る為に死力を尽くしてる訳ですよ。で結局は刺客達も…まあこれは後で触れましょう。
ここからラスト50分(笑)のチャンバラシーンです。
やっぱり血や泥ってのは美しいですね。そんな中で「吾郎ちゃんだけ白い部分が残ってる、汚れてないのが凄く憎たらしかった」と役所さん&市村さんに言われていた吾郎ちゃん。殿ですから…
小弥太を見て「えっ何だアイツ?」って感じで興味津々で眉を寄せて見てる殿が可愛いです。未知との遭遇!
「殿、こちらから抜けられます!」と突っ込んでいく浅川に「いかん!そっちは罠だ、戻れ!」と叫ぶ半兵衛。その声に殿だけが気付いて振り返ります。
目が合う二人。でも殿は楽しそうにフフッと笑って行ってしまう。「殿ーっ!!」半兵衛も大変だ…。でもこの陽光を浴びた笑顔が妙に素敵でキュンとします。
そしてカッコ良すぎる刀の墓場シーン!一人平山に気付いた殿の、目だけで浅川に示すシーンがすごい好きです。漫画以外でホントに目だけで何かを示せる人初めて見ました。
そして浅川と殿だけになって、近寄ってくる平山に浅川は恐怖するんだけど後ろの殿は何故か前に出ようとする。板ばさみの中それでも刀を構えて殿を後ろに庇い「うわああああー!!」と泣き叫ぶ浅川が健気で…そこに颯爽と「殿ーッ!!」と現れ、両腕を広げ身を挺し殿を守る半兵衛登場!マジかっこいい…旧作のスマートさとはまた違ったカッコよさ。愛があるよね、愛が!

そして狂った明石藩の侍がこっちに刃を向けてきて、浅川に斬られたのを見て「半兵衛。戦の世とはこのようなものであったのかの」
「おそらくは」
「……中々良いものじゃ」
えっ…?という声が聞こえてくるような周りの明石藩の武士達の表情がイイ感じです。
「死が近づけは、人は生きることに感謝が生まれる。無駄に生きるだけなら、この世はなんとつまらぬところか…」
俯きがちに、目元が隠れ気味で言う顔は妙に幼げで、斉韶自身ずっとこう思って生きてきたんだろうなと思わされます。
「そうだ半兵衛。よい事を思いついた」
「はっ」何言うのこの子、って感じの半兵衛の表情も何とも言えません。
「余が老中になった暁には、再び戦の世を在らしめる事にしようぞ」
恍惚とした表情で、本当に夢見るように言う斉韶。
こんなイカレた台詞をこんなうっとりした表情で…
変態も突き抜けると最早変態という言葉で片付けるのもおこがましくなりますね。あっちがおかしいんじゃなくてむしろこっちがおかしいのか?と思わず不安になってしまうような迷いのなさ。無邪気なんですよね。
こんな台詞を子供のような純粋さで言ってのけた吾郎さんの演技に乾杯。

そして松方さんあらわる!
矢の時といい殺陣のシーンでの松方さんは素敵過ぎて困ります。68歳の癖に!私の守備範囲は上方向にだけ広がる一方ですよ!(八つ当たり)
浅川斬られる。まあこの後落ち武者となって平山と旧作の再戦をするんですがね。
「殿を頼みます!頼みます!」と叫びながら溜め池に落下…台本ではもっと静かな台詞だったようで。これを心からの叫びに変えたのは光石さんの演技です。きっと役に入り込んだ光石さんは、本当に殿を守りたかったのでしょう…。旧作よりもずっと印象強い役でした。浅川対決は、試合に負けて勝負に勝ったって感じですね(試合→平山との再戦)
続いて石や棒を使って大活躍する小弥太との遭遇。
侍なんて大した事ねーなぁ、と小馬鹿にする小弥太に、突然グサッと突き刺さる小太刀。カメラが切り替わると、綺麗なフォームで小太刀をぶん投げた後の爽やかな表情の殿が!
「なかなか良い事を言う奴だ。褒美に余の小太刀を与えてやった」
行動がいちいち予想の斜め上過ぎます!
この時の殿の表情が、何かこう狩りして仕留めた興奮というか、そういう笑顔でゾッとしました。本物の山猿だ~みたいな。気に入って殺すってどういう事だよ!

で、この後の「ここを抜ければ我らの勝ちだ!」と言う半兵衛に向けた、あの何とも言えない表情。残念そうな、戸惑うような…ドキッとしました。
そして、旧作では外を拝む事も出来ず皆落合宿の中で死んでいった訳ですが、三池版は外に出て、あとちょっとという所まで来るんですよね。
さっきまでの地獄絵図のような要塞内とはうってかわって、長閑な農村の風景って所が日常と非日常の境界線って感じで趣があります。
「殿、走りますぞ」と斉韶を振り返り言う半兵衛。半兵衛は本当に殿を守りたくて、もしこの戦いに勝って殿と一緒に生き延びられたら、何だかんだ死ぬまで殿に付いていったんだろうなと思います。例え泰平の世を戦国時代にするような老中であろうと、苦悩しながらもズルズルと。
「まだ勝負はついていないようじゃの」
半兵衛が振り返ると、そこには血まみれ、泥まみれで道に立ち塞がる新左衛門が。
もうここからのラストシーンは圧巻ですね。
役所さんと市村さんのガチンコ対決、そして役所さんと稲垣吾郎のガチンコ対決。旧作と展開が違う為にこっからは完全三池版オリジナルな訳ですが、このラストシーンが一番素晴らしかったと思います。もうそれだけでこのリメイクは大成功です。
でも緊迫感あるこのシーンですが、撮影前おどけてミュージカル風のターンをする市村さんに合わせて役所さんと監督もそういう雰囲気だったりとか、「欲しいっ!!」と農村中に響き渡る新左衛門の台詞でその日の撮影が終了し、「勝負はおあずけ!」と言った監督に同じトーンで「続くっ!!」と返したという役所さんとか、パンフレットのエピソードが楽しそうで和みました。
「半兵衛、おぬしに用はない!そこをどけ!」
満身創痍の果ての迫力が凄まじいですが、半兵衛も負けていません。
「そうはさせぬ!この命に代えても殿をお守りしてみせる!」
多分この辺の撮影じゃないでしょうか、市村さんが撮影中吾郎に「市村さんの背中に泣けてきた」と言われた、とインタビューで話していました。「お前のためにやってるんだよっ!(笑)」と言いつつ明らかに嬉しそうだったんですが、きっと吾郎さんは役で冷たくする分プライベートで優しくしたんですね!
「我が殿の御命、それほど欲しいのか!」「欲しいっ!!」
この即答!!迫力!!役所さあああん!!(うるさい)
「あの殿が老中に加わることで、どんな災いが民草に降りかかるか…おぬしが一番知っておるだろう。違うか、半兵衛!」
あの道場に半兵衛が尋ねてきた時には言えなかった事を、今ここで問い質す新左衛門。もしあの時点でこれを言っていたら、半兵衛は答えられなかったかもしれません。しかし半兵衛は今まで迷っていた心がこの戦いの中で…いや、むしろ「迷わず愚かな道を選べ」の時か。あの囁きは、生き方に惑う半兵衛自身への言葉であったのかもしれません。もう半兵衛は迷いを断ち切っていた。
「だからどうした!わしもおぬしも侍に生まれた。理由などわからぬ。いや、要らぬ!己の運命に従うまで!」
要らぬ!と叫ぶ半兵衛は男前です。あの迷わず愚かな道を選べ、の真意と、それを聞いた半兵衛の表情の意味がやっと分かった気がします。その後半兵衛が折れるシーンが無かった訳も。私はいちいち気付くのが遅いなあ…(笑)
「おぬしが我らの仲間であれば…いや、せめて明石の家臣でなければ、どれほど事の成就が容易いことであったか」「言うな!!」
半兵衛も即答。悪い巡り合わせだな、の言葉の通り、本来二人はよきライバルであり碁を囲む友人。ここもリメイクの切ない所ですよね。どちらもどうしたって譲れないものがある。侍だからこそ。
「痩せても枯れてもこの鬼頭半兵衛は侍!むざむざ主君の首を差し出すと思うてか!新左…行きたければわしを殺して行け!」
「そうさせていただこう」
半兵衛の熱い叫びに、新左衛門も低く返し、腕で刀の血を拭う。この拭う動作!超カッコイイ!すごいカッコイイ!役所さーん!(うるさい)
「一騎討ちとは、また風流じゃの」
ハッ殿の感想なのに半兵衛と新左衛門の対決を追ってました。すみませんあまりの熱い展開に。この殿の涼しげな顔!腹立つー!お前の為にやってんだよ!でもこういう部分含めて、吾郎さんじゃなきゃ演じられない役だと思います!(どういう意味?)
市村さんは殺陣は初めてという事ですが、迫力ありましたねえ。
あの刀弾かれてギンッてなる所カッコイイです。
そして道場では五分と五分だけれど、勝たなければならない理由がある新左衛門。足で泥を蹴り、目潰し!強いという訳でもなく切れるという訳でもないけど負けない、という半兵衛の評通りですね。
「半兵衛、あの世で待っててくれ」という言葉を言う新左衛門の優しい顔が切ないです。本来首を落とすというのは一番辱める殺し方な訳ですが、この場合は新左衛門の半兵衛への優しさでしょうね。ギロチンが一番優しい処刑法というように、長く苦しまないように一息でという。
静かに見ていた殿の方へ転がっていく首。
そしてその切ない空気を再び燃え上がらせる殿。
「島田とやら。風流かと思えば、なんとも卑怯な剣法ぞ。気に入った」
首を傾げておどけたように言った後、可愛らしく気に入った、と微笑み、あの鞠のように半兵衛の首を蹴っ飛ばす斉韶。
半兵衛の事は多分この世の中で一番好きだったと思うんですけど、愛着というものはない。もう半兵衛は動かないし喋らないし、動いて喋る半兵衛が好きだったからもう意味もない。
「主君のために、命を賭けた家臣の首を。お蹴りなさるか」
これも台本としてはシンプルに句読点も無かった台詞のようですが、本当に怒りが篭った口調と表情で、流石入ってるなあと思います。
それに対する斉韶の返しがまた圧巻です。
「蹴りたければ、余の首も蹴るがよい」
どうでも良さそうに、穏やかな口調で鞘を抜きながら言い放つこの言葉。
劇中一番イカレてると思ったのはこの台詞です。相手の気持ちを思いやれずにやるとかじゃないんですよ。もう人間として違う世界で生きてるんですよ。
怒りとして殺さなきゃ駄目だって事じゃなく、この世界にコイツを存在させたら駄目だという気にさせられます。酷い事するけど自分がされるのは絶対やだよ、じゃないんですよね。あるいは自分がされたってそれはそれで面白いと思ってるんですよ。イッちゃってるし、この上なくエロいなと思ったシーンでした。(えっ)

そして前回でも触れた新左衛門の魂の叫び。
斉韶のせいで酷い目に遭った人々の名を挙げ、御命頂戴仕る!と宣言する新左衛門。思わず胸が熱くなります。
それに対してあくまでクールな斉韶。
「まつりごととは、まつりごとを行う者にのみ都合よく、万民はその下僕として生きるしかない。それがこの世の仕組みだということがわからぬのか?」
噛んで含めるようにゆっくりと、出来の悪い子供を諭すように語ります。しかしそれに対して新左衛門が鼻で笑うように反論。
「たとえ仕組みはそうであろうとも、下僕が下僕として刃向うときがある。下が支えて初めて上であることが、まだおわかりになりませぬか」
転がっている、もうどす黒くなってしまった半兵衛の首。
「ただの飾りの刀に過ぎぬものを、本身だと思われたが誤り」
「たわけ…飾りだと」
台本だとこの時点で怒ってるっぽいですね。「たわけ!飾りだと!」って書き方ですし。やっぱりこういう味付けにしたのは、吾郎さんが役に本気で向き合って自分に染み込ませた結果だと思います。
「飾りは所詮飾りでござる。黙って飾られておれば、それでよいものを」
蔑み笑いながら近付いていく新左衛門。
吾郎さんはパンフで「実際対峙した時の役所さんは怖かったですよ。その役への情熱が湯気となって立ち上っていました。(笑)」と言っていましたが、確かに血まみれ泥まみれでゆっくりと自分に迫ってくる新左衛門は怖いでしょう。
しかし「まあ、僕も頑張ったんですけど」の言葉通り、吾郎さんも負けてなかった。
「下郎めぇぇぇ!!」と初めて怒り叫び、抵抗せず腕を下げたままの新左衛門の懐に飛び込み、刀で刺突。
自分という人間を存在させる為に振るってきた刀。
「これでも飾りと申すか」
監督からは、「殿はこの感触(人を刀で刺した)が好き。だから怒ってるんだけどちょっとうれしそうな顔をする」という演技指導があったと。
生きてるって実感出来る瞬間が快感なら、まさに刀で人を刺す感触ってのは斉韶にとって生の実感というか、好きな瞬間なんでしょうね。
そんな斉韶を至近距離から睨み付けていた新左衛門、そのまま自分も斉韶をグサッ!
目を見開き、血を吐く斉韶。
更に近付いて深くまで貫き、新左衛門の肩に顔を乗せるような体勢へ。その今まで全く汚れていなかった顔を、自分の血に染まった掌で汚す新左衛門。
このシーン役所さんも快感だったんじゃないでしょうか。一人だけ汚れてないのが憎たらしいって言ってた吾郎ちゃんの顔を、自らの手でベットリ汚す訳ですからw
そして倒れ伏し、もがき苦しむ斉韶。
「痛い…っ怖い…」
これ、笑ってるって意見があって、うっそーんと思って前回見て、感想の中で「泣いてるのか笑ってるのか分からない、感情を最大限表現した顔」と言いましたが、今回見て「やっぱり…笑ってる…?」と思いました。
いや、新文芸座の音響が良かったんですよ。場内も適度な広さだし。それで声とかハッキリクリアに聞こえた結果、やっぱ笑ってるな…と考えを新たにしました。適当言ってすみませんでした皆さん。
笑ってるよ…痛がりながら怖がりながら笑ってるよ…もう壮絶すぎて、息をするのも忘れるようなシーンです。
「これは意外、死ぬのが怖いと申されるか」という新左衛門の台詞も完全に食われてます。台本上は完全にただ痛がって怖がってるだけなんですよね。
それをこういう、笑ってのた打ち回っちゃうようなキャラクターに化けさせたのは完全に吾郎さんの役へ向かい合った結果というか…本当に恐ろしい人だなと思いましたw鳥肌立ちますw
「殿、お覚悟召されい」と声を掛ける新左衛門に、「そうか…死ぬのか」と呟く斉韶。
「島田とやら…礼を言う」
300人超という明石藩全員が殿の為に戦って、死んで、そして刺客達も結局は殿に感謝される為にやったようなものだったという。凄まじいオチですよね。「誰かに感謝される。…かも、しれん」と言った新左衛門も全くの予想外でしょう。
「これまで生きてきて…今日という日が、一番、楽しかった」
台本だと「楽しかったぞ」とか言って小憎たらしいんですが、吾郎さんの言い方は本当に無垢で、あどけなくすら感じる表情で笑って言うんですよね。泥だらけ、血だらけで。
役所さんも「その台詞を言う前に首を刎ねたい衝動にかられた」と言っていましたが、実際吾郎さんが言う台詞を目の当たりにして、怒りは湧いて来なかったんじゃないでしょうか。怒るというか、ひたすらやり切れない感じ?
そして便所に転がる首。便所に転がるというのもすごいアイディアです。

この泥を這うシーンを撮影する前に、監督に「このカットは、泥だらけになりすぎたり、血糊がつきすぎてNGっていうことはあるんですか?」と聞いたという吾郎さん。監督がラジオで話したエピソードですが、印象的だったんでしょうね。
それに対して、吾郎さんもSWICHで「何か監督の演出は本当に、ドSというか…(笑)あの最後のシーンの撮影の為に、泥を監督自らがすごい嬉しそうに用意して、沢山作ってかき混ぜて、僕に向かってこれこれ!って指さした後に敬礼するんです」というエピソードを明かしてました。いい関係だな~と思いましたね。全力を尽くす役者にその舞台を作る監督。また是非一緒にやって欲しいなと思いました。
実際好き勝手やってくれと言って、撮影に入ってみたら台本より大きく進化した化け物のような演技を見せてきた訳ですからね。「おもしろかったですよ、撮ってて」「自分より役の事は分かってたんじゃないかな」「ああいう人です」とかインタビューの度に色んなエピソードを話してくれる三池監督ですが、確かに撮ってて楽しいだろうなあと思います。ここでこの表情するか!みたいな。
役所さんもインタビューで心から感心したように「本当に、吾郎ちゃんの本性というか。それを見抜いた…キャスティングでしたよねぇ~」としみじみしてくれてました。「本性って」と笑った後に、「はい。バレちゃいました?あれが僕の本性です」と怪しげに目を細めてみせる吾郎に目を細めて笑う役所さんとかね。二人が一緒のインタビューでは始終役所さんが吾郎の言う事に優しく笑ってくれててキュンキュンしました。市村さんも『吾郎ちゃん』もしくは『殿』のエピソードを出さないインタビューは無かったしな!

思えば発表からマジでマジで?役が予想外過ぎて想像つかないんだけど楽しみ過ぎるとソワソワして、零号試写を観た人の完全ネタバレが出てそれを熱心に読み、本当にこんな役を吾郎が…!?とワクワクは最高潮に及びそれから公開まで非常~に長かった。
まあその前に試写会に当たって役所さんと山田さんを生で見たりもしたんですが、それは置いといて。
2009年から今年までずっと気にしていた映画が、これだけ面白くて、今賞とかを獲りまくっている。何だか夢みたいですね。
そして今日この後毎日映画コンクールの授賞式なんですよ。昨日中に上げたかったんですけどスマスマとかに見入っちゃってねハハハ!
殿オンリーの感想だから短めに済むかな?と思ったら全然そんな事は無かったぜ!むしろ前回より長いんですけどwwwバカスwwww
とにかく私にとって人生で初の生吾郎をありがたくも見せて頂ける事になったので、目を皿のようにしてガン見してきたいと思います。イヤッホー!
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